幽玄の森

一般大に通うアマチュアテューバ吹きによる、コンサート感想中心のブログ。たまに聴き比べや音楽について思うことも。

情熱と知性 5/21バッティストーニ&東フィル

東フィルさんには「運営ボランティア」なるものがありまして、チラシのパンフレットへの挟み込みと開場時のパンフレット配付を無償でお手伝いするものです。今回それに初めて応募し、そのまま中で聴かせて頂きました。

東京フィルハーモニー交響楽団
第94回東京オペラシティ定期シリーズ
指揮:アンドレア・バッティストーニ

ロッシーニ/歌劇『コリントの包囲』序曲
ヴェルディ/歌劇『シチリア島の夕べの祈り』より舞曲
プッチーニ/交響的前奏曲
レスピーギ組曲シバの女王ベルキス』
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今話題のイタリアの若き鬼才バッティストーニ、これまでなかなか聴く機会がありませんでしたがようやく演奏に触れることができました。先日のトゥーランドット全曲は仕事中片耳には入ってきて、凄いなあとは思ってましたが。

ロッシーニからレスピーギまで、イタリアの作曲史100を時代順に並べた意欲的なプログラム。ローマ三部作で名演を残すこのコンビが今日メインに据えるのは同じレスピーギのベルキス…!吹奏楽出身なら誰でも興味を持つでしょう。そうでなくても、バッティストーニの指揮で、レスピーギの最大規模の曲を実演で聴けるのはとても幸せなもの。

お仕事を終えてそのまま席へ。
1曲目、「コリントの包囲」序曲。出だしから芳醇な香り高い音色に魅せられる…!東フィルってこんな音でしたっけ…?
2曲目、「シチリアの晩鐘」より舞曲。舞曲ばかりいくつも集めたゆえに、やや単調になりがちなこの曲。でも今日の演奏はいっこうに飽きが来ない、それどころか一歩一歩引き込まれ続ける…!木管のソロがどれも歌心に充ちた素晴らしいものであるとともに、トランペットが冴える…。強靭で、それでいてうるさくなく、安定感があり、理想的なトランペットってこういうのを言うんじゃないでしょうか。

後半に入ってプッチーニの交響的前奏曲。初めて聴く曲です。プッチーニ24歳、ミラノ音楽院卒業作品とのこと。オーケストレーションは厚く効果的だし、ヴェルディよりもむしろワーグナー的な響きが実に面白い曲。大変気に入りました。
木管による主要主題の提示、何と美しいサウンドでしょう…!この美しいサウンドに、展開部でトランペット・トロンボーンの鮮やかなファンファーレが重なる。その輝かしさといったら。ものすごい音圧なのに、決して割れずうるさすぎず、美しい…。この演奏のお陰でまたひとつ好きな曲が増えました。バッティストーニの指揮は、劇的ながらも決して流れに溺れることなく鮮烈で、この曲の魅力を最大限伝えるもの。

そしていよいよベルキス。1.ソロモン王の夢→3.戦いの踊り→2.夜明けのベルキスの舞い→4.饗宴の踊りという曲順での演奏。大管弦楽がステージにひしめく凄まじい光景。
第1曲。冒頭からフルートとクラリネットのアラビア風旋律が歌に充ち神秘的で素晴らしい…!その後、愛を語るチェロのソロ。ここまでやるか、と言わんばかりに鳴らしきります。凄い…。ハープ・チェレスタ・グロッケンが加わって曲に速度がついてくると、オケの洗練された響きは加速度的に濃度を増してゆく…。
第3曲。冒頭の金管の雄叫びはハイテンションで音圧に圧倒されるが、決してうるさくない。これってなかなかない、素晴らしい…。続く打楽器、ミリタリードラムに導入される戦いのテーマは圧巻。レスピーギの大管弦楽がオペラシティいっぱいに響く…。
第2曲。一転してフルートのエキゾチックなメロディから導入されるこの曲は、木管陣の美しさが光ります。イングリッシュホルンなんかもつ惚れ惚れするくらい…。チェロやヴァイオリンのソロも恍惚感があって引き込まれる…。
第4曲。ソロモン王とベルキスの結婚を祝うなんてとても思えないような、狂乱状態の音楽。打楽器も金管もオペラシティ全体を震撼させる、でも決してうるさいとは思わせないサウンド。そこで登場するバンダのトランペットはオケの力強いトランペットとは対照的に恍惚としたような魅惑のサウンド。その後の強烈なファンファーレからの大団円。圧倒的名演。

今をときめくバッティストーニ&東フィルの感想はもちろん大満足。全体的に、もちろん若い指揮者の若さ、あるいは情熱ももちろん感じるのですが、それ以上にむしろこの人の音楽は美質、知性が魅力だと思います。一つ一つの場面展開を克明に描き分け、ライヴ感ある盛り上げ方をしながらも、決して勢いに流されることなく、丁寧に曲を作り上げていく。その結果、打楽器や金管の強烈なサウンドも決して飽和しない。なんて大きな器なんだ…。

東フィルさんのこのお仕事、また機会があればやらせて頂きたいなと思ってます。