幽玄の森

一般大に通うアマチュアテューバ吹きによる、コンサート感想中心のブログ。たまに聴き比べや音楽について思うことも。

オペラシティで聴くブルックナー 5/9飯守さん&シティフィル

自分のオケ練習の前に暇を縫って行ってきたのがこちらの演奏会。
5/9(土) 14:00開演@東京オペラシティ タケミツメモリアルホール
東京シティフィルハーモニック管弦楽団 第289回定期演奏会
指揮 飯守泰次郎
ブルックナー:交響曲第8番(ノヴァーク版 第2稿)

僕はブルックナーエルガーが好きな作曲家の筆頭で、飯守さんのブルックナーなら悪かろうはずがない!と楽しみにして聴いて来ました。最近のインキネン&日フィルやカンブルラン&読響のブルックナーも聴きたかったものの叶わなかったので…。そして何より、オペラシティの残響の中で、力みのないシティフィルのサウンドでブルックナーを聞くというのが、今回の目的です。ブルックナーの作品のなかでは、とりわけ8番は5番や9番と並んで最高傑作だと思っています。

演奏会前の飯守さんのプレトークを、4楽章の解説に入る辺りから聴かせていただきましたが、思い入れたっぷりにピアノを弾きながらの解説。4楽章冒頭に提示される主題の調性的な常識から逸脱した進行、また曲の最後で「ブラームスベートーヴェンのような力強い勝利と比べると軽い終わり方で、ブルックナーの純粋さを感じる」など、興味深かったです。

開演直前、3階Lサイド のバルコニーからポーチのようなものがステージ上に落下。確かにオペラシティのバルコニーは僕も座るとヒヤリとするものですが、気をつけて頂きたいものです。。。

ともあれ演奏は無事に始まり。1楽章。シティフィルは弦楽器のサウンドが無理な力みのない自然体なもので、オペラシティを豊潤な響きで満たしてくれます。ホルンやテューバはトラの方でしょうか、綺麗に溶け込んでいました。
1楽章では飯守さんがテンポを執拗に煽り立てるかのような指揮をされる場面が多く、失礼ながらオケが戸惑ってるのでは?と感じるポイントが目立ちました。精彩を欠く、などと言っては御大や音楽ファンの皆様にお叱りを受けましょうが、何かしっくり行かない雰囲気。強弱や語り口は説得力あるのですが…

2楽章。Cのあたりで木管が噛み合わない箇所があったものの、自然なテンポでブルックナー独特のスケルツォをドイツ的に雄弁に語り、Trioへ。ここでの深淵な響きはなかなかのもので、オペラシティのキャパを自然に生かした心地よいサウンドの上に金管の咆哮が見事に乗り、胸一杯になりました。

3楽章。2楽章Trio同様、慈愛に満ちたサウンドで進行します。ただ、どこかせかせかした印象を受けました。もっと幽玄の森をさまよっていたかった、という感じ。サウンドはまさに幽玄そのものでしたが。テンポが何よりそうだし、ブルックナー特有の、ブリッジほとんどなく次の動機へと移行する場面で、繋がりが悪いと感じました。これは僕が普段、ハース版に慣れているせいもあるかと思いますが…。

4楽章はトランペットの強烈な音に冒頭から打ちのめされ、そしてティンパニが素晴らしい。「これぞベテランティンパニ奏者によるブルックナー」といった趣。しかしこれもどうもせかせかした印象は拭えず。そして各動機の間の繋がりが悪い、あるいは間が持たない印象。また強奏Tuttiでのサウンドの混濁っぷりがやや残念でもありました。想像以上にあっさりとした4楽章でした。

とまあ不満が随分あったかのような偉そうな口調で書き散らしてしまいましたが、僕の一番の目的であった「オペラシティの響きを活かしたブルックナーが聴きたい」は充分に果たせました。弦楽器、特に1stVnとVaはここぞというときにはっきりと出てきながら、常に冷静さを失わず透明感を維持しており、こういうブルックナーも良いなと思いました。
テンポなど、僕の好みではありませんでしたが、ワーグナーの延長上に明確に位置付けられた、説得力のあるものでした。
思い入れの強すぎる曲は実演で聴くと難しいもの。。。なかなか大満足とはいきませんね、
ブルックナーも聖域化せずに色々な解釈が認められて行くべきだと思いました。

終演後、自分の練習があるので2回ほどのカーテンコールでそそくさと退出しました。あまりやりたくはなかったのですが。。。
それにしても、終演直後のフライングブラボーと拍手がなければ、もう少し余韻を味わいたかった…。